武藤彩未1stALBUM
『永遠と瞬間』歌詞世界考察

先日610の日SpecialLive A.Y.M. Ballads 終わりの渋谷の飲み屋で。
いつもの仲間と酒を酌み交わしていると、仲間の一人がポツリとこぼした。
「彩未ちゃんの曲、いい歌詞だなぁ」
なんだかそこからムクムクと『永遠と瞬間』のことを解説しなくては!!という気分にさせられ、結局2時間以上語り倒してしまった。
そんな夜のことを書き留めたサイトである。
この考察はほとんどわたしの感想である。だが願わくばこのサイトの文章を肴に、ワイワイと彩未ちゃんの歌詞の世界に浸りながらああだこうだとくだらない会話をしたいと思っている。
※基本飲み会での会話です(笑)

『永遠と瞬間』歌詞考察

永遠と瞬間のアルバムで最も大事な要素は「今そのとき」という"瞬間性"とそれが永遠にも思えるという瞬間の愛しさ。それら8曲、いや「Seventeen」も含めると9曲すべてその瞬間のことを歌ったものであるということがこの歌詞世界に入り込んでいくことによってわかってくる。ここでは1曲ずつその要素を考察していく。※歌詞は各画像をクリック

考察「宙」(歌詞)
この曲はアルバムタイトルを読んで字のごとく「永遠と瞬間」の愛しい瞬間のことを下敷きにしている。最初のターム「いつのまに夕暮れにワープする」。あなたと話していると全てのことが一瞬で過ぎ去ってしまう。愛しいその瞬間だ。あなたと会っているときは一瞬で過ぎ去ってしまうのに、会えない時間はまるで…。それが「明日会えるのにさみしくなるのは 恋をしたしるし 君も見てるの? 流れ星が降り注ぐ宙」に表れている。夜空の星々に思いを馳せている様子、つまり遠く離れたいつまでも変わらない<永遠>に思いを馳せて…

時間というWonderland

考察「時間というWonderland」
瞬間とは季節の移り変わりも意識する。「春はサクラ」「夏は花火」「秋は落葉」「冬は魔法」どの季節にも愛おしいものが存在する、まさに現代版「枕草子」。季節の愛おしい瞬間を歌いながらもその一瞬一瞬を"あなたとともに過ごしたい"。そんな気持ちが最後のタームに表れる。「春・夏・秋・冬の 想いを胸に あなたと 見果てぬ夢」まさにアルバムのテーマ通り、永遠は愛おしいその瞬間瞬間のできごとの連続ということをそのまま表した曲となっている。そして重要な歌詞表現として「たぶん…」「つまり…」が挙げられる曲なのだが、これはわたしこう思ってるんです、と歌詞の中で彩未ちゃん自身が考察をしている。この一瞬一瞬が大事な思い、それってつまり…と2番になると"たぶん"が"つまり"に変わるのもそういうことなのだ。永遠と瞬間に自覚的になっている。

彩りの夏

考察「彩りの夏」
この曲の初披露は2013/7/19の武藤彩未ソロ・プロジェクトお披露目の日だった。1980年代のアイドル楽曲を60分だけ歌うというコンセプトで開かれたDNA1980の最後に披露されたオリジナル楽曲。この曲も「永遠と瞬間」というコンセプトに実にマッチしたものになっている。1980年代のアイドル楽曲が今も愛されるという"持続性"(永遠とも言い換えられる?)とアイドルという"儚さ"(瞬間)を見事に表現した。そして歌詞世界が表すのは夏の淡い(一瞬の)恋心。でも実情は夏を彩るほどに熱い。「クラスメイトは 誰も知らない 教室じゃ目を わざと合わさず 二人静かに育てた 恋だから」というフレーズのなんと愛おしいことか。そして再度意識される「永遠と瞬間」。「ほら太陽が 悪戯してる 笑ってる間に 西へ傾き あなたの影に私は 溶けてゆく」あなたといる間は一瞬で過ぎていってしまう時間と、そしてあなたと寄り添い一つになる影。しっかりと「時間というWonderland」からの「永遠と瞬間」のバトンをもらっている。最初に作られたオリジナルであるのにこのアルバムにおいては3曲目にしかなりえない構成。舌を巻くばかりだ。

桜ロマンス

考察「桜ロマンス」
桜ロマンスも非常に素直な構成。まずは桜というモティーフそのものが"期間限定"。これはサビにも登場する"青春"のメタファーになりうる。素晴らしい一瞬が過ぎ去る哀愁は、まるでロマンス(恋愛≒ひいては儚さの連想)である。一方青春時代の自由さを歌ってもおり、自由とそれが認められる一瞬を愛おしいと思う気持ちが入り混じり、郷愁を産む。そんな郷愁を「青春でしょ?笑っちゃうね!」と歌うのは本当に彩未ちゃんらしいのだ。

とうめいしょうじょ

考察「とうめいしょうじょ」
冒頭いきなり掴まれる。「グラス揺らすレモンジュース 残り少ないかな? それともまだこんなにあるわと思うかな?」レモンジュースは甘酸っぱい。これも"青春"のメタファーとして有名なものだ。そしてその青春時代は一瞬?それとも渦中のわたしにとってはまだまだ長く思える?(永遠?)という問い。そのあとはこの青春(現在)に対しての過去と未来に思いを馳せていく。
610の晩、大きな展開があったこのフレーズについても考察したい。
「月から見た地球 ケイタイに映せば 美し過ぎるから 壊せはしないでしょ、、」
上記の歌詞はどういうことなのか。これは月と地球の関係性を捉える。月は地球の衛星である。そして「月から見た地球」と歌っている以上、月は彩未ちゃんである。それは「とうめい」しょうじょな私<月>はあなた<地球>の観測次第<君次第>でどうにでもなってしまう。そんな関係性を切なく余韻を残す一つの「瞬間」の物語だ。

A.Y.M.

考察「A.Y.M.」
モティーフ論から言えば非常にわかりやすくこちらもすぐに「月」そして「青春」という言葉が出てくる。とうめいしょうじょからの連続性を非常に感じやすい構成だ。そして"永遠"にも思える"青春"という茨の森。サビも青春の森ではあなたしか信じることができないからこそ、あなたにどんなことを言われてもいいよ…という恋心が哀愁を感じさせるA。それも友情にも似た感情というY。でもそれって妄想なのかしら…とM。そして2番冒頭の「いつまで続くの? 不安なメロディー」という歌詞に続く。不安に思う気持ちがそのまま2番に表れ、曖昧のA。でも決意しなければならないという勇敢のY。けれどまだ"青春の森"から出れないという迷宮のM。そんな構造になっている。

女神のサジェスチョン

考察「女神のサジェスチョン」
本アルバム「永遠と瞬間」は基本的に"時間"のことを歌う中でこの「女神のサジェスチョン」は"タイミング"に焦点を合てる。青春を淡い夢の時間と定義すると「おやすみとおはようの間に何かが起こる」という歌詞に意味が出てくる。そしてその夢<青春>の中ですべては起こるんだよね、という例でのオーロラ姫(眠り姫)と白雪姫を出す。どちらもキスで夢から目覚める存在だ。「君の人生はハーイ、そうです 君だけの力では完成しないといえる」というのもやはりそれは運命的なものであって上記2名の姫の例えを出しているのだ。でもだからこそ…。だからこそ運命を信じなければならない。それらはすべてタイミング次第なのだと。あなたの女神がそんな運命の啓示を受け入れるようにいうのだからそのタイミングは信じてみようよ。そんな風に響く歌だ。

永遠と瞬間

考察「永遠と瞬間」(歌詞)
アルバム表題曲である「永遠と瞬間」。そこには大きな意味が込められている。"永遠であってほしい瞬間"だ。言い換えれば"私の愛しい時間"のことである。だからこそ「見逃さないでね 愛でね」と彼女は歌うのである。でも無常にも時が過ぎていくのもわかっている。だから2番では「焼き付けたいよね 愛でね」とその瞬間を"永遠"にしたいと願うのである。
ライブで彩未ちゃんがこの歌を歌うと、本当に一瞬一瞬の貴重さを思い知らされる。愛を持って見届けよう、そんな気持ちになる。僕が一番好きな歌です。

Seventeen

考察「Seventeen」(歌詞リンクなし)
番外編の曲。でもこの曲も一貫して時間を歌う。それは"17歳"という貴重な時だ。そしてセブンティーンアイスのコラボ曲でもあるため、カラフルで楽しい言葉が並んでいる。「ガーベラ」「フェアリーチェリーピンク」「ストロベリー」「キャンディードロップ」と挙げていけばきりがないほどだ。17歳という時は希望にあふれる。まだどんなものにもなれるのだ。だからこそ「好きな色 好きな夢 選ぼう」とまるで宣言するかのように歌い上げている。

総括

この歌詞考察を続けていく内に『永遠と瞬間』というアルバムが作られるためにはおそらく作成順と発表順は違うな、ということを考え始めた。
もちろん、最初に発表された130719「彩りの夏」そしてAX披露の130927「女神のサジェスチョン」は早くに作られたであろうが、ライブハウスツアーでの披露となる「時間というWonderland」(131030@西川口Hearts)→「桜ロマンス」(131114@新横浜NEW SIDE BEACH)→「永遠と瞬間」(131124@渋谷eggman)→「とうめいしょうじょ」(131129@稲毛K'sDREAM)→「A.Y.M.」(131229@赤坂BLITZ)と続いていくわけだが、この歌詞の連続性を考え、さらに森雪之丞氏と三浦徳子氏の歌詞を鑑みるにアルバムを通しての「時間とアイドル性」という構想がまずあり、そこからアルバム全体としての物語、そして曲それぞれの物語へと落としこんでいったのではないかと思う。結果として「Seventeen」もその"瞬間"のことを歌うことになるわけだが、この全体構想のときから漏れているがために、やはり盤外扱いなのではないだろうか。

About Works

『永遠と瞬間』(えいえんとしゅんかん)は、2014年4月23日に発売された日本のアイドル歌手、 武藤彩未の1作目のスタジオ・アルバム。発売元はアミューズとA-Sketchによる新レーベルSHINKAI。サウンドプロデュースは本間昭光が担当。
作品の世界観を重要視するためのアルバムデビューであるが、アイドルとしては異例。武藤彩未の音楽活動のテーマでもある「温故知新」を体感するべく、武藤が愛する1980年代歌謡曲のエッセンスを取り入れた新しい音楽を目指すものであり、新しさと懐かしさが混在しながら絶妙なバランスを保っている独自の世界観を表現したものとなっている。 新しさと懐かしさが混在した世界は、このプロジェクトにおいては「NEWTRO-POP」と謳われている。
アルバムタイトル「永遠と瞬間」は、「変化しすぎると大切なものが失われ、変わらないと古くなってしまうという」という、相反したバランスですべてのものが成立していることを表したものである。
収録曲は、作詞を1980年代アイドル歌謡を多く手掛けた三浦徳子( 松田聖子「青い珊瑚礁」、堀ちえみ「リ・ボ・ン」などを作詞)、森雪之丞( 斉藤由貴「悲しみよこんにちは」、浅香唯「C-Girl」などを作詞)が、作曲をポルノグラフィティ、いきものがかりのプロデュースを手掛けた本間昭光が担当、また、アレンジを若手サウンドクリエータのnishi-ken(ケツメイシ、 SCANDALなどを作曲)、篤志(THE 野党のメンバー)、KAY(テレビ朝日ミュージック所属)が担当しており、デビュー前に行われたソロライブの中でオリジナル曲をライブ毎に披露し、何度も改良を重ねて完成させている。※引用:永遠と瞬間 - Wikipedia

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